変形性膝関節症とは

ひざ関節は、軟骨によってダメージから守られています。しかし、軟骨に加わる負担が増すと、軟骨がすり減ってしまったり、炎症の影響で軟骨が破壊されてしまいます。こうして、動くたびに引っかかりや痛みを感じるようになるひざの病気が、変形性膝関節症です。
さらに負担が増すと、半月板が損傷したり骨自体が削れたりすることもあり、歩行が困難になります。
レントゲン検査で変形性膝関節症と診断された国内の患者数は、2400万人(厚生労働省の発表より)。また、文献によると50代を過ぎると発症率がぐんと高まることも分かっています。

変形性膝関節症の病態と症状

変形性膝関節症にはひざの痛みの他、様々な症状が現れます。その症状から、進行具合をある程度判断することが可能。変形性膝関節症の病態として、初期、中期、末期と3つの状態が考えられます。
初期はひざに違和感が生じるものの、ひざ関節の大きな変形はありません。ただ、放置して中期に進行すると、半月板の変形や滑膜の炎症といった大きな異常が生じ、簡単には症状が治まらなくなります。そして、末期では日常生活に支障を来すような痛みや関節の変形が生じるのです。

正常なひざ関節 初期のひざ関節 中期のひざ関節 末期のひざ関節

初期の症状

  • ひざの違和感
    すぐに治まる一次的なひざの痛み
  • 起床時に痛む
    朝の第一歩でひざに痛みが生じる

中期の症状

  • ひざがこわばる
    ひざの曲げ伸ばしがしづらい
  • 正座が困難
    正座やあぐらなど、床に座るのが苦痛
  • 階段が苦痛
    階段を降りるときに強い痛みが生じる
  • ひざに水がたまる
    痛みに加え、ひざが腫れてぶよぶよする
  • 音が鳴る
    ひざでゴリゴリと音がする

末期の症状

  • 歩行が困難
    耐え難い痛みで活動範囲が縮小される
  • ひざ関節の変形
    O脚に変形することが多い

変形性膝関節症の原因

変形性膝関節症の症状の直接的な原因は軟骨の損傷と滑膜の炎症ですが、それを誘発する危険因子は様々。この危険因子がはっきりしないケースを一次性変形性膝関節症、病気や外傷などの影響だと判断できるケースを二次性変形性膝関節症と区分することができます。

一次性の変形性膝関節症

一次性の変形性膝関節症

はっきりと原因が分からない変形性膝関節症の原因としては、加齢や肥満、筋肉の衰え、O脚やX脚などがあげられます。これらの影響でひざ関節の負担が増してしまうのです。
肥満を例にして説明しましょう。通常、ひざ関節にかかっている負荷は、立っているだけでも体重の2.5倍。階段の昇降ではさらに大きくなり、3.2.〜3.5倍と言われています。
他にも、女性患者が多い点について、ハイヒールを履き続けることや女性ホルモンが影響すると考えられています。

一次性変形性膝関節症の危険因子

  • ・加齢(関節液の粘度が低下)
  • ・肥満(ひざへの負荷は体重の約3倍)
  • ・筋肉の衰え(運動不足や老化が影響)
  • ・ひざの負担が大きいスポーツの習慣
  • ・O脚、X脚(負荷が一部に集中)
  • ・女性(女性ホルモンの影響)
  • ・ハイヒールや合わない靴
  • など

二次性の変形性膝関節症

二次性の変形性膝関節症

ひざ関節や周辺の外傷、他の病気が関係している変形性膝関節症を二次性と分類します。
外傷では、スポーツや事故などによる靭帯や半月板の損傷、骨折、ねんざなどの影響がほとんど。また、ひざ関節に影響する他の病気には、関節リウマチや痛風、大腿骨内顆骨壊死(大腿骨の一部が壊死する病気)などがあげられるでしょう。

二次性変形性膝関節症の危険因子

  • ・骨折やねんざ
  • ・靭帯損傷
  • ・軟骨損傷
  • ・半月板損傷
  • ・関節リウマチ
  • ・痛風
  • ・大腿骨内顆骨壊死
  • など

変形性膝関節症の検査方法

変形性膝関節症の検査としては、下記の4つが代表的です。実際の診察内容に適宜これらの検査結果を踏まえて、総合的に診断を行います。※以下、当院では対応していない検査が含まれます。

X線検査(レントゲン検査)

ひざのレントゲン撮影を行う、もっともメジャーな検査方法です。関節裂隙(かんせつれつげき:関節の隙間)の狭小具合や骨の状態を確認します。変形性膝関節症の進行度合いの判断には、4つのグレードに分けられたKellgren-Lawrence分類(K-L分類)という基準が一般的です。

Grade 1

関節裂隙に変化はないが、わずかに骨棘形成、または軟骨下骨硬化が認められることも。
変形性膝関節症の予備軍とも言える状態。

Grade 1

Grade 2

わずかながら関節裂隙の狭小(25%以下)が見られるが、骨の変形は確認できない状態。
このグレードから、変形性膝関節症の診断となる。

Grade 2

Grade 3

関節裂隙の狭小が半分以上(50〜70%)まで進行したひざ関節。
骨棘形成や骨硬化像がはっきりと確認できる状態。

Grade 3

Grade 4

関節裂隙の狭小が完全になくなった箇所も見られる状態(75%以上)。
著しい骨の変形が画像から認められる。

Grade 4

出典:「RADIOLOGICAL ASSESSMENT OF OSTEO-ARTHROSIS」(J. H. KELLGREN / J. S. LAWRENCE)
骨棘:こつきょく。骨の縁にトゲのような変形が生じること。
骨硬化:骨同士がぶつかり合い、硬くなっている状態。X線画像ではより白く映る。

MRI検査

骨がどうなっているか端的に調べられるレントゲンに対し、MRIはレントゲンでは調べられない軟骨や半月板、靭帯の状態を詳しく検査可能です。
また、骨内の検査にも有用で、骨嚢腫(骨にできるしこりのようなもの)や骨壊死などの有無を確認できます。

関節液検査

ひざの炎症が見られるケースや、関節水腫(ひざの水たまり)を起こしている場合に行われる検査がこちら。関節内に貯留する関節液を注射器で吸い取り、色や粘性を検査します。
変形性膝関節症の関節液は、黄色がかった透明色が特徴的です。

血液検査

関節リウマチなど他の病気の影響が考えられるケースで、適宜行われるのが血液検査。炎症反応やリウマチ因子の反応などが診断材料となります。

変形性膝関節症の治療法

一般的な変形性膝関節症の治療は、保存的治療と手術的治療の大きく2種に分けられます。ただ、いずれも損傷した軟骨や骨を修復することはできません。目的は、痛みの緩和とひざの可動域拡大です。

変形性膝関節症の保存的治療

変形性膝関節症の保存的治療

保存的治療には4種類の方法(薬物療法、物理療法、装具療法、運動療法)があります。
ヒアルロン酸注射に代表される薬物療法ですが、それ以外にも鎮痛薬や漢方の服用、湿布などの外用薬、ステロイド注射などがあります。物理療法は痛みの緩和や可動域の改善を目的とした、温熱や電気刺激、レーザーなど。ひざ関節の装具には、サポーターやOAブレース(機能性の高いサポート器具)、杖、足底装具(脚の変形を矯正する中敷きなど)があります。また、ひざに負担をかけない筋トレやストレッチ、ウォーキングなどで血流改善や筋力アップを図るのが、運動療法です。

メリット デメリット
薬物療法 治療に保険が
適応される
完治しないので、
治療の継続が前提
物理療法 運動機能の
活性化が期待できる
痛みが
改善しないこともある
装具療法 ひざへの負担が軽減され、
動きやすくなる
装具をはずすと
痛み方が元に戻る
運動療法 血流の改善や
筋力アップが期待できる
方法を間違うと
悪化してしまう

変形性膝関節症の手術的治療

変形性膝関節症の手術的治療

保存的治療で改善が見られず、かつK-L分類のグレード3以上の場合、手術的治療が選択肢に加わります。保険適応となる関節鏡視下郭清術、高位脛骨骨切り術、人工関節置換術が一般的です。
関節鏡視下郭清術は、内視鏡で関節内を撮影しながら、問題のある組織の切除する手術。高位脛骨骨切り術は、脛骨(すねの骨)に切り込みとプレートを入れてO脚などを矯正する手術。そして最も知られる手術が、ダメージを負った関節面を切除し、人工のひざ関節に置き換える人工関節置換術です。

メリット デメリット
関節鏡視下郭清術 2mmほどの小さな傷に抑えられる 重度の変形性膝関節症は
適応しない
高位脛骨骨切り術 自身の関節を
最大限に温存できる
骨の癒合に
時間がかかる
人工関節置換術 痛みと歩行の改善が
期待できる
傷跡、入院、リハビリなど
負担が大きい

当クリニックの治療法